海街diary(1)/吉田秋生

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

ようやくバナナ連鎖から解放された吉田さんの最新作。鎌倉を舞台に、四姉妹の淡々となんでもない日常生活が描かれている。あれ?と思った男の子、ラヴァーズ・キスの朋章だった。ちょっと若そうなので、里伽子と出会う前くらい?他にも、微妙にリンクする人物がいたりするし、吉田さんって、やっぱりこうゆう連鎖が好きなんやろなあ。ラヴァーズ・キスはもちろんのこと、河よりも長くゆるやかにとかの雰囲気に似てる。吉田さんの作品は、こうゆう感じのほうが好きなので、うれしい。
吉田さん、やっぱりいいなあと思った。ときどき、ものすごくいい言葉がある。ずしんと胸にくるような。初回の長女の言葉もそうだし、二話の最後のフレーズもそう。あたりまえのことなのだけれど、日々の生活のなかですっかり忘れてしまっていることに、はっと気づく。家族の再生物語、らしいのだけれど、なんか違う。たしかに、家族を題材にした物語なのだけれど、再生を望んでいるかと言えば、そうではなくて。ただ、淡々と描かれる日常に、思わず涙してしまうのだ。あいかわらず、人間の心理描写がうまい。コンプレックスや劣等感なんかの、ひねた感じを描かせたら秀逸。蝉時雨のなく頃が、いちばんよかった。吉田さんお得意の、年のわりに大人びた子供である四女が、次第にわがまま?というか、自分を出して子供っぽくなっていく姿に、なんだか救われる気がする。