さくらん

trifle2007-03-11


ここのところ、ガールズムービーが元気ですな。安野モヨコ×蜷川実花×椎名林檎とくれば、必ず観に行かねばなるまいということで、行ってきました。レイトで観たんやけど、圧倒的に女の人のほうが多かった。まあ、女子ターゲットな映画なので、予想どおりといったところ。
見終わってから、一番に思ったことは「写真集のような映画やなあ」ということ。良くも悪くもニナミカワールド。全体的に、平坦で二次元に感じた。場面場面でポージングが目立つのは、やっぱりスチールの人なのだなと思う。カット割りも、ここで写真撮ったら綺麗!というのが目立って見えた。極彩色でコントラストのきついビジュアル、ロックでハードな色遣い。そこらへんは、ほんとうにニナミカの写真そのもので。色の綺麗さは、さすがという印象。そのビジュアルの美しさに、うっとりとしてしまう。ゼブラの帯やネイルアートやガラスの水槽などの現代モチーフは、わたしは破天荒な感じがよく現れていてよかったと思う。そうゆう時代感を無視したところはまったく気にならない。音楽も林檎節が炸裂していて。ときどき、ちょっとうるさく感じることはあったけれど、この映画には林檎以外考えられない。ニナミカモチーフの金魚もうまいこと使ってはったなあ。金魚に吉原の花魁たちを重ねて。モチーフを上手に生かしているところは、さすが。使い方を心得てはる。でも、最後の子供が金魚をビードロに戻すシーンは、なんやったんやろう。
役者陣は、ベテラン勢がやはりすごい。とくに、男性陣の控えめな演技がよかったなあ。女が主役の映画ってのをしっかりわかっていて主張しすぎず、それでいてさらっと印象に残る演技。石橋蓮司しかり、安藤政信しかり、永瀬正敏しかり。成宮寛貴もよかったのだけれど、最後の笑うシーン。切なそうな顔など一切せずに、満面の爽やかな笑顔をしてほしかったな。惣次郎というのは、騙すことを悪いともなんとも思ってないんだから、なんでもないようないつもの屈託のない笑顔でいてほしかった。そこらへんは、監督とわたしの印象の差なんかなあ。女性陣は、菅野美穂がめちゃめちゃよかった。笑う演技ができる女優さんやなあ。ドキリとする濡れ場もがんばったなあと感心。木村佳乃も見事な体当たり演技で、イメージが変わった。ここまでしはるんやな。この二人の女優魂には、惚れ惚れしました。土屋アンナは、正直うーんと。威勢のいいところとか啖呵切るところとかはいいのだけれど、あまり色っぽさがなくて。最初の荒削りなきよ葉まではよかったけど、艶やかで魅惑的な花魁日暮という感じにはちょっと遠いかな。大森南朋小泉今日子小栗旬庵野秀明忌野清志郎、ゴリと、モブもなかなか豪華。それ探すのが、結構楽しかった。
肝心のストーリーですが。はっきり言って、原作ファンにはショックな展開。ストーリー上、ここは絶対はずせないと思っていた名シーンがなかったわりに、最後の原作にはない終演に、なんでやねん!とつっこみを入れずにはいられない。というか、映画としてもちぐはぐな感じなのでは。あれだけ男に頼らず「てめぇで出らぁ」と豪語していたのに、結局それかいと。「さくらん」は、ルンルンなラブストーリーではないはずなのに。ハッピーエンドな乙女チックな恋など求めてはいないのです。女の繊細で粋で強い部分を描いた物語なのだ。それが、あのラストではぶちこわしになってしまったのでは。「てめぇの人生、てめぇで咲かす」んやないのかー。モヨタン、あれでいいのか・・・。と思ったら、モヨタンが第二部の構想を脚本家さんに渡されて、それを参考に作られたのだとか。ええ、じゃあ第二部はあんなストーリーなの?!なんか、ちょっと残念。
あと、演出の部分ですごく気になってしまったところがあって。遊女たちの着慣れたはずの裾の長い着物。その足捌きが不格好すぎる。踏んでる!踏んでるよ!そして、絡んでる。ちいさなことかもしれないけれど、それを目の当たりにして一気に現実に引き戻される。そこは完璧に指導してほしかったなあ。