東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン

trifle2007-04-30

http://www.tokyotower-movie.jp/
ゴールデンなウィークだというのに、結局近場で遊びます。どうせ、あいだは普通に出勤なので。みんな、旅行にでも行ってはるんやろか?祝日なのに、案外空いてた。それとももうみんな「バベル」に流れていかはったんやろか。でも、空いてるのはいい。気兼ねなく、のんびり観られる。
映画館で、これほど泣いたのは久しぶりかもしれない。そりゃ、嗚咽するほどの号泣ってわけじゃないけれど、あとからあとから涙が溢れて。途中から、泣き通し。人目を憚ることなく、ぼたぼたと流れ落ちる涙。抑揚のない淡々と進むストーリーが、余計にリアルな感じで。物語だからといって、なにかすごい出来事が起こる必要もないし、起こらなければならないというわけでもない。こうゆう淡々とした展開は、日本映画ならではだなあと思う。それを退屈だと思う人もいるかもしれない。けれど、わたしはその淡々とした邦画の世界が好きだ。このリアルな世界観が、とても心地いいのだ。オカンとボクと、時々、オトンの、何気ない日々。そうゆうものが、すごくリアルで哀しくて。涙が止まらないくらい、どっぷりと浸れてよかった。
東京タワーは、大泉バージョンも、もこみちバージョンも観たのだけれど、オダジョーバージョンがいちばん原作に近かった。リリーさんの持つシニカルな、世の中斜めにみてる感じが、映画はよく表現できてたように思う。さすが、松尾スズキ脚本って感じ。でも、いつもの松尾スズキのはじけっぷりは少々抑え気味だった気がする。原作に忠実に描こうという姿勢が伺えた。なんだか原作のダイジェストって感じだったので、原作を読んでいない人には、ちょっと辛いのでは?と思う。正直、ついていけてないのではないかな。原作は、もっと内面をえぐるような、心の内を丁寧に表現されていたのだけれど。映画は、なんだか原作ありきって感じがして、そこまで内側が描かれていなかったのが、残念。2時間という時間の制約があるのはわかっているけれど、そうゆうことを差し引いても、希薄すぎる。オカンの東京へ行く決意とか、ボクの仲間たちがオカンをどれだけ慕っていたのかもよくわからなかったし、オカンが東京へ来てもう7年も経っていただなんて思えなかった。それに、原作を読んで大事だと思っていたシーンが、ことごとく削られていて、なんで?って思った。母の子への、子の母への愛情の深さを表現していたシーンだったからこそ、残念でならない。原作のファンだから観に行くって人が確かに多いだろうけど、原作を読んでいない人も理解できて楽しめる映画にしてほしかったな。
役者陣は、かなりよかった。オカンの樹木希林も、オトンの小林薫も、さすがって感じで。もちろん、ボクのオダギリジョーは言うまでもなく。松たか子の控えめさも、すごくよくて。樹木さんは、ほんまにすごかった。だからこそ、内田也哉子の演技が稚拙に思えてしかたがなかったけれど。でも、さすが親子なだけあって、自然な流れで違和感がなく。どちらをとるか、なんだろうなあ。ストーリー展開が、もひとつな感じなだけあって、役者に助けられた感じがしないでもない。役者の演技は、みんなほんまによかったんやもん。
男の人は、多かれ少なかれ、みんなマザコンなのだと思う。確かに、マザコン!えー?!って思ってしまうけれど、だけどなんだかそのマザコンさえも、ずいぶん愛しく感じてしまった。マザコン、いいじゃん!なにが悪いん??って。家族を大切に思わない男の人は、いやだなあ。オカンに優しくできない男の人は、もっといやだなあ。そうゆう人は、きっと私のことも大切にしてくれないだろうなあと、思う。程度は大事だとは思うけど。マザコンと親孝行の境界は、案外あいまいで。どっちにせよ、自分の家族のことを好きじゃないのは、なんだか淋しすぎる。人間が生まれてはじめて出会う世界が、家族のなかなのに。
親孝行あんまりしてないなあと、思う。自分勝手で申し訳ないなあと、思う。大切に思ってはいるのに、なかなか素直になれなくて。いい年した大人が、情けない。子が思うほど、親は若くなくて。親はどんどん年老いているのに、昔とちっとも変わらない子供。大人にならねば。というか、子供の頃に比べて「好き」という気持ちをおおっぴらに表現することに臆病になっている。だけど、きちんと伝えなきゃダメな言葉だということもわかっている。隣では「俺、うちに電話するわ」と言っていた。私も、帰ったら親孝行しようと思った。ちゃんと気持ち伝えようと、思った。ごめんよりも、ありがとうって。オカンにありがとうって言いたくなる。