めがね

trifle2007-09-24

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ようやく公開されたので、観に行ってきました。ほんとうは、昨日の京都シネマの舞台挨拶に行きたかったんやけど、梅小路公園へと行っていたので。生の荻上直子監督、小林聡美さん、市川実日子さん、もたいまさこさんを拝見したかったんやけど!あんなに大雨降るんやったら、舞台挨拶観に行ったらよかったかな・・・と、びしょ濡れになりながら思ったりも。
映画全体を通して、そこはかとなく、ぬるくてゆるい。沖縄には沖縄時間があるんだというように、ここにも独自の時間の流れがあった。誰も急ぐことなく、焦ることなく、ひねもすのたり。なんともこの言いようのない空気感が、「かもめ食堂」の監督さんやなあと思う。「かもめ」もかなりゆるかったけれど、それ以上にゆるい。まだ「かもめ」は、お客さんに来てもらう!という目標のようなものがあったけれど、この「めがね」にはいっさいそういったものはなく、ただ“たそがれる”。起承転結も皆無。何が起こるわけもなく、始終淡々と日々を暮らす。ここまで抑揚のない映画も珍しい。だからこそ、役者さんの自然な演技が際だつ。セリフもそれほど多くないから、役者さんたちの表情がすごく大事で。小林聡美さん、市川実日子さん、もたいまさこさん、加瀬亮さん、光石研さん、みんなほんとうに伸びやか。小林さん(タエコ)の次第に馴染んで解放されてゆく姿は、見ていて気持ちがいい。美日子ちゃん(ハルナ)のまだまだ荒削りな“たそがれ”具合もリアルな感じ(まだここへ来て3年目だと言っていたし)。もたいさん(サクラ)は、黙っていても口を開いても、さすがに迫力ある。加瀬くん(ヨモギ)は、突然来て突然去っていく嵐のような奔放さと柔軟さがぴったりだった。光石さん(ユージ)は、なんか出てくるだけで和む。きっちりとしたゆるさが絶妙だった。
青い海と広がる空。真っ白な砂浜。一面の田園風景。この美しい景色を大スクリーンで観られてよかった。まるで自分がこの島にいるような気分になる。無理をしたり、片意地はったりする必要なんかないんだと、しみじみ思う。だからこそ、最初はサクラやユージの誘いを拒絶していたタエコも、次第に解放されていったんだろうし。人と人との距離感が、すごく心地よかった。べったりとしているわけじゃなく、でも無関心でもない。ほどよい距離を保ちつつ、心を解放する。自由がなにかを知っているから、自分らしくいられるのだ。タエコやサクラがこの島以外で何をしているかなんて、聞いたりなんかしない。それを映画としても語ろうとしない。でもそれは説明不足なんかじゃなく、どうだっていいことなのだ。ここにいるあいだは、ただたそがれる。一人でたそがれたり、ときにはみんなでたそがれたり。黙々と会話もないごはんなんだけど、なんだか幸せに満ちている。朝起きて体操をしてごはんを食べて、たそがれて、またごはんを食べて、たそがれて、一日が終わる。ほんとうになんて贅沢で幸福な生活なんだろう。都会で無理矢理ピントをあわせた生活をしているからこそ、こうゆうゆるゆるとした時間が必要なんだと、あらためて感じる。
映画に出てくるものがいちいち可愛くて、いちいち美味しそう。地味そうに見える衣装も、密かに可愛い。タエコの真っ赤な鞄、ジャマンのものなんだけれど、こうして見るとさらに可愛かった。やっぱり買うべきやったかなあ。シンプルな衣装に、小物やボタン使いがオシャレやったし、パジャマもシンプルでタエコらしい。街をぶらぶらとするときに持ってた小さなトートも、どれも可愛かった。衣装がシンプルでナチュラルだから、そのカラフルさがよく栄える。サクラの衣装なんか、絶対もたいさんしか似合わない!ださそうで古くさそうなんやけど、なあんか味がある。宿ハマダの外装から内装まで、ゆるやかで伸びやかな感じがして雰囲気がよかった。「かもめ」同様、ほんとうにごはんが美味しそう。なんてことのない素朴なメニューなんだけど、おいしそう。春野菜をゆでただけのものでも、あの空間に馴染むとなんだかすごい立派なメニューに思える。そして、かき氷はほんとうにおいしそう。小豆をことこと煮て、シロップをひとかけの、なんの変哲もないかき氷のように思えるんだけど、きっといろんなものが詰まってるんやろうなあ。
映画でみんながしていたメルシー体操。映画館で観ているということを忘れて、思わず自分も一緒に体操したくなる。ぐーんと伸びたり、ぶるぶるとほぐしたり。とっても気持ち良さそう。パンフレットに順番が描いてあったので、うちでこっそりしてみるのもいいかも。きっと、ゆるい気持ちになれそうな感じ。あと、スチール写真が「かもめ」同様、高橋ヨーコさんなんだけれど、とても清々しい素直な写真を撮られるかたです。こうゆう写真、大好きやなあ。
ほんとうに、ゆるいだけの映画。何か事件が起こるわけでもなく、誰かが争うわけでもない。退屈でつまらないと思うひとも多いだろう。だけど、ぴったりとはまるひとには、とてつもなく素晴らしい映画だと思う。映画に何を求めるかは、ひとによって違う。無理しすぎてるかな?頑張りすぎてるかな?って思う人は、ぜひこの映画を観てほしい。一緒になってゆるやかにたそがれてほしい。わたしも、この映画の舞台の与論島に、たそがれに行ってみたくなった。